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トランプと諜報機関の戦い

2017年1月8日   田中 宇

 まず今回の筋書きを書いてみる。米国の諜報機関群が「ロシア政府がネットのハッキングによって米大統領選の結果をねじ曲げ、トランプを勝たせた」とする報告書を出した。プーチンの命令で、米民主党本部(DNC)のサーバーから党幹部のメールの束を盗み出し、ウィキリークスにわたして暴露させ、クリントンの評判を落とし、トランプを勝たせたという筋書きだ。諜報界は昨年末から同様の主張を発し続け、オバマはそれに基づき駐米ロシア大使館員35人をスパイ容疑で追放する対露制裁を発動した。だが昨年来の諜報機関やオバマの主張には、明確な根拠が全くない。露政府がトランプ当選を喜んでいるので犯人に違いないとか、ロシアのハッカーがよく使う(だが誰でも簡単に入手できる)プログラム(マルウェア)が使われているので露政府の仕業に違いないとか、屁理屈しか根拠として提示していない。 (US Officials Say Russia Approval of Trump Win Is `Evidence' of Hacking

 米諜報機関の一つNSAはネット上の米国発着の主な通信のすべてを監視保管している。民主党のサーバーを出入りした情報もすべて保管している。NSAは今回の報告書に参加しているが、FBIやCIAよりロシア犯人説に自信がない。NSAが保管する情報の中に、民主党サーバーからネット経由でメールの束が盗み出されたことを示すものがないからだ。メールの束はネット経由の窃盗でなく、民主党内部の誰かがUSBメモリなどで持ち出し、ウィキリークスにリーク(意図的に漏洩)した可能性が高い。 (Emails were leaked, not hacked

 筋書き続き。トランプを中傷するロシア犯人説は、米諜報界による濡れ衣攻撃だ。諜報界が、まもなく上司になるトランプに濡れ衣攻撃をかけるのは自滅策だ。諜報界自身が進んでやるはずがない。オバマの命令でやらされている。オバマはロシアとトランプが嫌いだから攻撃しているのか??。ならばこんな土壇場でなく、トランプが勝つ前に攻撃開始すべきだった。オバマは逆に選挙直前、FBIがクリントンを再捜査するのを認め、トランプ勝利に加担した。オバマはトランプを敵視でなくこっそり支援している。 (土壇場のクリントン潰し) (Intel Chief Cites Phantom Evidence on `Russian Hacking'

 911以来、米諜報機関は、軍産支配のための「ウソ発生機関」だ。リビアやシリア、イランなどに関し、諜報界が発するウソに悩まされ続けたオバマは、自分より強い立場で大統領になるトランプに、諜報機関の徹底改革や権限剥奪をやってもらいたい。オバマは、諜報界がトランプに取り入ってウソ発生機能が延命するのを防ぐため、諜報界をけしかけてトランプに対する自滅的な戦いに追い込んでいる。トランプは就任後、諜報機関の本部機能(=ウソ発生機能)を大幅縮小し、現場での情報収集中心の「現業機関」にする改革をやる予定だ。今後心配なのは、この動きを阻止したい諜報界が、かつてケネディを殺ったようにトランプを暗殺し、諜報界(軍産)の言うことを聞くペンス副大統領を大統領に昇格させ、トランプ革命が潰されることだ。筋書きここまで。以下本文。

▼クリントンを不利にしたメール暴露はロシアのしわざでなく民主党の内部犯行

 筋書きを考えた後で気づいたのだが、私はすでに昨年末、同じ筋書きの記事を書いている。12月26日の「トランプの就任を何とか阻止したい・・・」の後半がそれだ。毎日何十本かの英文情報をできるだけ精読し、そこから分析することに時間のほとんどを費やしていると、追想する余裕がなく、いったん配信を終えた過去の自分の分析についての記憶が奥の方に追いやられてしまう。私は多くの分野で、事前に気づかず同じような分析を何度も繰り返して書き、書いた後になって重複に気づく。そんな記事に価値があるのか??。価値判断は読者に任せる。読んでいない方は、まず12月26日の記事を読んでいただきたい。今回は、そこからの新展開を分析する。 (トランプの就任を何とか阻止したい・・・

 昨年末からの新展開は、1月6日、CIA、FBI、NSA(信号傍受)という米諜報機関群が50ページの報告書を発表し、「露政府がプーチンの命令で、民主党のサーバーからメールをハックしてウィキリークスに暴露させ、トランプを勝たせた」と、正式に主張し始めたことだ。これに先立ち、オバマは12月29日に駐米ロシア大使館員を追放し、米露間の敵対が劇的に増した。米議会上院軍事委員長のジョン・マケインは「ロシアのハッキングは、米国の重要インフラに対する攻撃であり、戦争行為だ」と宣言し、米露が核戦争寸前であるかのような観が醸し出されている(オバマは最近、露敵視扇動のため、米国の選挙システムを「重要インフラ」の一つに指定した)。 (Assessing Russian Activities and Intentions in Recent US Elections) (U.S. evicts Russians for spying, imposes sanctions after election hacks) (McCain: Russian cyberintrusions an 'act of war'

 しかし、ロシア犯人説を主張する人々は、誰一人として説得力のある具体的な根拠を示していない。米露の敵対関係から考えて、露政府が米国の公的機関のサーバーに侵入を試みるのは、一般論としてありえる。だが民主党サーバーに露政府が侵入したとする主張には、ろくな根拠が示されていない。無根拠にロシアを犯人扱いし、濡れ衣をかけて戦争だと騒いでいる。かつてイラクに「大量破壊兵器保有」の濡れ衣をかけて侵攻し、イランに「核兵器開発」、シリアに「化学兵器使用」、ロシアに「ウクライナ東部への軍事侵攻」のそれぞれ濡れ衣をかけて経済制裁してきたのと同じ構図だ。濡れ衣はすべて、CIAや国防総省など諜報機関群によって作られている。米諜報界は911以来、濡れ衣戦争用の「ウソ発生機関」「歪曲捏造諜報機関」である。 (Purge the CIA They're a threat to the republic by Justin Raimondo

 今回のロシア犯人説の報告書を出した諜報機関群のうち、CIAとFBIは報告書に万全の自信を持っているが、NSAは「控えめな(moderate)自信」しか持っていないと報告書に書かれている。NSAは、米国の多くのサーバーを出入りする情報をネット上でコピー(傍受)して保管・分析する諜報機関で、何者かが民主党のサーバーに侵入・窃盗したのなら、その際の信号のやり取りを保管しているはずだ。NSAが控えめな自信しか持っていないことは、NSAが民主党のサーバーに何者かが不正侵入した時の傍受記録を持っていないことを意味している。選挙前の重要な時期に、NSAが民主党サーバーを監視していなかったはずがない。記録の不在は、昨夏に誰も民主党のサーバーに不正侵入(ハック)していないことを示している。 (Here Is The US Intel Report Accusing Putin Of Helping Trump Win The Election By "Discrediting" Hillary Clinton) (RT stars in ODNI report on 'Russian activities and intentions' in US presidential election

 その一方で、民主党サーバーにあった幹部のメールの束を、何者かがウィキリークスにわたした(アップロードした)のも事実だ。ウィキリークスが暴露したメールは本物だと米諜報界のトップが認めている。この両者を矛盾なく説明するには「メールの束は、外部からのネット経由の侵入によってでなく、ネットを経由しないかたち、たとえば内部のLAN経由でUSBメモリなどにコピーされて持ち出され、ウィキリークスにアップされた」と考えるのが妥当だ。ロシアのスパイが物理的に民主党本部に忍び込んだという話は出ていないので、可能性として高いのは、民主党内部の何者か(サンダース支持者とか)がクリントンを陥れるため、内部犯行としてウィキリークスにアップ(リーク)したことだ。ハックでなくリークである可能性が高い。 (Emails were leaked, not hacked

 ロシアハック説は無根拠なのに、マスコミで喧伝されている。米マスコミは、諜報界と結託している。特にワシントン・ポストは今回、でっち上げの根拠に基づくロシア犯人説の報道を繰り返している。ワシポスは大晦日に「ロシアが米国の電力システムをハックした」とする記事を出したが、すぐにひどい誇張記事だとわかった。本土防衛省(HDS)からの指示で、バーモント州の電力会社が、社内の全コンピュータをウイルススキャンしたところ、電力システムにつながっていない孤立したPCの1台からマルウェアが検出された。そのマルウェアはロシアのハッカーがよく使うものなので、という理由だけで「ロシアが電力システムをハックした」という記事が書かれた。マルウェアは電力システム内で検出されていない、と後から電力会社が発表し、ワシポスは訂正的な記事を小さく出した。 (Russian operation hacked a Vermont utility, showing risk to U.S. electrical grid security, officials say) (More Bullsh*t Fake News from Washington Post) (Russia Hysteria Infects WashPost Again: False Story About Hacking U.S. Electric Grid) (WAPO Admits: Russia Didn't Hack US Electrical Grid

 以前の記事で何度も紹介しているように、ワシポスはそれ以前に、諜報界が作ったと思われる「プロパオアネット」を根拠に「親ロシアなオルトメディアが偽ニュースを流してトランプを勝たせた」とする記事を出し、あとでインチキ性を認めるかのようにプロパオアネットから距離を置く追記を出している。これらから言えるのは、オルトメディアでなく、ワシポスのような米マスコミこそ「偽ニュース」「マスゴミ」ということだ。 (偽ニュースで自滅する米マスコミ) (トランプの就任を何とか阻止したい・・・

 ワシポスは70年代のウォーターゲート事件で、諜報界からもらった情報でニクソンを批判する記事を出し「悪者」ニクソンを弾劾辞任に追い込んだ「英雄」だった。あれも今考えると、中国と和解し、金ドル交換停止でドルの基軸性を破壊し、次はロシアとの和解をやって米覇権体制を崩し、世界を多極化しようとしたニクソンに対し、米覇権を守りたい軍産諜報界が攻撃をかけて追放した暗闘に加担したのであり、ニクソン=悪、ワシポス(ジャーナリズム)=善の構図も、暗闘の一環として歪曲されたものだった。ニクソンを追放したせいで冷戦は、次の隠れ多極主義者であるレーガンの登場まで15年延長され、無用な戦争や対立が続いた。この構図の中で日本でも、ニクソンに同調して対中和解を進めた田中角栄が「ジャーナリズム」によって攻撃され、倒されている。ジャーナリズムを賛美する人々は、その悪質な善悪歪曲性、政治性に気づいていない軽信者たちだ。 (WashPost Is Richly Rewarded for False News About Russia Threat While Public Is Deceived

▼トランプは諜報機関の政治力を削ぎ現業機関に戻す

 今回の「サイバー攻撃」をめぐるロシア敵視で重要な点は、敵視がロシアだけでなく、まもなく大統領になるトランプにも向けられている点だ。米国の軍産・諜報界・マスコミは、自国の大統領に「濡れ衣戦争」を仕掛けてしまっている。これは「クーデター」とまでいかなくても「反逆」であり、トランプは1月20日の大統領就任後、本格的な反撃を開始するだろう。トランプと親しい新聞NYポストや、イスラエル諜報系のデブカファイルによると、トランプは諜報機関の大幅な改革を計画している。トランプ陣営は、改革など計画していないと否定しているが、デブカによると、計画は事実だという。改革は、これまで諜報の歪曲や濡れ衣作りに専念してきた米国の各諜報機関の本部機能を大幅に縮小し、代わりに米国内外の現場での情報収集の機能を拡大するという、諜報機関の基本に戻すものだ。トランプ陣営は、諜報界が政治的になりすぎているので現業中心の組織に戻そうとしている。 (Trump wants to shake up the CIA) (Reports that Trump eyeing revamp of spy agencies are false: spokesman

 デブカの記事は、他にも興味深いことを書いている。それは、トランプの側近とプーチンの側近がすでに話し合って決めた米露協調策の内容だ。トランプ就任後、米露が急に仲良くなることはしない。「蜜月状態」を演出せず、合意できる部分で協調しつつも、全体的にはライバル関係を維持する姿勢を相互がとる。まず取り組むのはシリアとイラクの内戦を協力して解決すること、つまりIS退治の進展と、パレスチナ和平だという。米露協調のIS退治は、前から予測されてきたことだ。イスラエルの入植地建設(=パレスチナ破壊)を支持するトランプがパレスチナ和平というのは奇異だが、米露協調といいつつ実態はロシア(や中国)に任せることならあり得る。 (Why Trump and US intel clash over Russia) (中東和平に着手するロシア

 米露がライバル関係を維持するのは、多極型の新世界秩序を形成するという意味だろう。すでに多極型の世界になっているBRICSでは、ロシア、中国、インドなどが、相互に協力する一方で、ライバル関係を維持している。トランプは、米露間の不均衡状態を、均衡状態へと是正する、ともデブカは書いている。BRICSに象徴される多極型世界体制では、それぞれの極の力が均衡し、一つの極だけが強くて他を支配する状態にしない(それにより多極間の談合を維持する)ことが企図されている。デブカによると、プーチンはこれまで何度も米国に対し、合意できる点で協調しようと提案してきた。01年の911直後にはブッシュに「テロ戦争」への協力を申し出た。11年にはオバマにリビア安定化策への協力を申し出た。だがいずれも断られている。米国はトランプになって、ようやくまともな対応をしている。 (大均衡に向かう世界

 米外交界の大御所(隠れ多極主義者)であるヘンリー・キッシンジャーが、トランプとプーチンの両方と親しいことを利用して、米露和解を仲裁しようとしているという話も最近よく目にする。英インデペンデント紙によると、ロシア軍がウクライナ東部から撤兵し、その見返りとして米国は対露制裁の理由となってきたロシアのクリミア併合を悪事でなく正当な行為と認める(対露制裁を解除する)という交換条件で、米露和解を実現しようとしている。「ロシア軍のウクライナ東部への侵攻」は、米欧マスコミで喧伝されてきたが事実でなく、ウソ発生機関(諜報界)と組んだマスゴミならではの偽ニュースだ。ロシアは最初から侵攻していない、つまりすでに撤兵している。米国が偽ニュースの発信をやめつつ(住民のほとんどがロシア帰属を望んできた)クリミアをロシア領と認めれば、米露和解が達成できる。 (Henry Kissinger has 'advised Donald Trump to accept' Crimea as part of Russia

 トランプは、諜報界やマスコミを引き連れた軍産複合体による米国支配の構造を、根底から破壊しようとしている。軍産の傘下には「外交界」もある。外交界は諜報界と非常に近い(ほとんど同一な)存在だ。米国と同盟諸国において、外交官はウソ発生装置の一つである。彼らは非常に権威があるが、発言の多くは信用できない(ウソをつく演技が非常にうまく、多くの人が騙される)。トランプは、全世界の各国に駐在していた大使に、大統領に就任する1月20日に辞任して帰国するよう命じた。新たな大使たちの赴任には、米議会上院の承認が必要だ。多く国で、米国大使が数カ月間空席になる。通常、米大統領の交代に伴う大使の交代は、新大使の議会承認後に行われるので、いきなり全員を辞めさせるトランプのやり方は異例で乱暴だ。 (Trump denies grace periods to Obama’s ambassadors

 だが、外交界が軍産の一部であり、トランプが軍産支配を破壊しようとしていること、それからトランプが米覇権体制を崩そうとしていることから考えると、トランプが同盟諸国など各国に米国大使がいない状態を作ることに、戦略的な意図があるとわかる。今後、米国と日欧など同盟諸国との関係が混乱するのは必至だ。しかしそれは、米覇権体制と米国の軍産支配を崩して多極化するための創造的な混乱になる。米国に見切りをつけた国から順番に同盟を外れ、きたるべき多極型世界に対応していく(フィリピンなどが先行、日本は最後部に属する)。 (No, Trump’s Dismissal of Obama’s Ambassadors Is Not an Unprecedented Crisis

▼トランプの暗殺を防いでやるオバマ

 話をロシアハック説に戻す。今回、ロシア犯人説を扇動している張本人はオバマだ。オバマの今回のロシア敵視は長期策だ。前出のデブカの記事は「オバマは大統領終了後も、トランプ政権の4年間、ロシア敵視の姿勢を続け、トランプの対露協調政策に反対し続ける」と予測している。オバマは今ごろになって急にロシアとトランプが嫌いになったのか??。オバマは、シリアをロシアに任せることでロシアを強化したし、濡れ衣戦争を拡大する軍産支配を嫌う点でトランプと同じ気持ちだ。そのオバマが軍産(諜報界・マスコミ)をけしかけ、トランプ・ロシア敵視の稚拙な濡れ衣戦争をやらせている。全く奇妙だ。裏がある感じだ。 (Obama preps for post-presidency feud with Trump) (軍産複合体と闘うオバマ

 むしろ私が見るところ、オバマは下野した後もトランプ敵視の主導役を引き受けることで、軍産(諜報マスコミ)を自分のまわりに引きつけ、軍産が下手くそな戦い方(すぐバレる濡れ衣を仕掛けるとか)をするよう仕向け、トランプと軍産の今後の戦いで軍産が負け、トランプが勝つよう「表向き敵視の隠れ後方支援」をやろうとしているようだ。この手の介入・後方支援がない場合、トランプが諜報界を解体した後、失業させられトランプを敵視する諜報界の残党が、米政府内に残っている残党と結託し、トランプの警備情報を入手して弱点を探り、トランプを暗殺しかねない。 (トランプが勝ち「新ヤルタ体制」に

 諜報界は、暗殺の実行犯をやらせられるテロリストや過激派をエージェントとして多数持っている。ソ連と和解して冷戦構造(=軍産支配)を終わらせようとして殺されたケネディの二の舞になる。トランプが殺されると、大統領の地位は副大統領のペンスが継承するが、ペンスはもともと軍産系だ。ケネディが殺されてジョンソン副大統領が昇格し、軍産の言いなりでベトナム戦争を泥沼化したように、ペンスが昇格したら米国は濡れ衣戦争三昧に逆戻りする(泥沼化して数年後に覇権崩壊するだろうが)。こうしたトランプのケネディ化を防ぐため、オバマがトランプを敵視する演技をやり続け、反トランプ勢力を管理し弱体化し続けるのだろう。 (Agency Makes Veiled Threat Against President-elect

 諜報界の側では、トランプの顧問をしていたジェームズ・ウールジー元CIA長官が、独自の発案で諜報界とトランプを和解させようとしている。ウールジーは先日「ロシアだけでなく、中国やイランも米国をサイバー攻撃している。事態は複雑で、一筋縄でない」と発言した。同時に、トランプの顧問を辞めるとも発表した。この意味するところは「トランプの対露和解を妨害しないよう、諜報界は中国やイランへの敵視を強める(トランプは中イラン敵視姿勢だ)。その代わりトランプは諜報界を破壊しない、という交換条件でどうだ」という提案と読める。ウールジーは、トランプの顧問を辞めてみせることで、諜報界の味方であることを示そうとしたのだろう。しかしおそらく、この独自案も、オバマが諜報界のロシア敵視を扇動する力にはかなわない。 (It's Not Just The Russians: Ex-CIA Chief Claims "More Than One Country Involved" In US Hacks) (中国の台頭容認に転向する米国

 諜報界や軍産は、実態が不明だが、これまでの歴史から考えて、彼らが戦後の米国覇権を支配してきたのは確かだ。トランプは、彼らを破壊しようとしている。これまで多くの大統領が彼らと格闘してきた。トランプは、その集大成をやろうとしている。それが成功失敗どちらになっても、世界は今後の数年間、トランプと軍産の戦いを軸に激動する。今年は戦後最大の政治激動の1年になるとユーラシアグループが予測している。マスコミは、トランプと軍産の戦いについてをほとんど(日本では全く)報じないだろうが、米国などのオルトメディアを読めば、ある程度のことはわかりそうだ。今後も私の記事は、この暗闘や、その結果進む多極化など、世の中の一般常識からかけ離れた分析を繰り返すことになる。 (It's the `Most Volatile' Year for Political Risk Since WWII, Eurasia Group Says



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