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トランプの敗北?

2020年11月5日   田中 宇

これは「投票後に政権転覆・カラー革命の試みに転換する米大統領選」の続きです。

昨日の記事でトランプが勝ちそうだと書いたのに、今日の記事ではトランプが負けそうだと書く。昨日の段階では、開票が残っていたほとんどの州でトランプが優勢だった。だがその後の24時間で、ワイオミングとミネソタがバイデンの逆転勝利が確定し、ネバダも優勢者がバイデンに代わった。ネバダの勝利が確定すると、この選挙はバイデンの当選になる。トランプは、ネバダを含む未決定の州のすべてに勝たないと当選にならない。郵送票の集計に時間がかかり、郵送分にはバイデンに入れた票が多いので、あとからバイデンが優勢になってきたと説明できる。トランプはこれに対し、民主党側が各地でバイデンの名前が書かれた郵送票の束を偽造して郵政公社の集配システムの中に紛れ込ませる不正をやっていると指摘した。 (Trump On Election Results: ‘We Will Be Going To The U.S. Supreme Court’) (Trump: 'Surprise Ballot Dumps' Behind Lead Changes; Arizona 'Sharpie' Malarkey Comes Into Focus

トランプ側も同じ不正をやれば良かったのだが、やらなかった。ペンシルバニアなどの州政府は、11月3日より後に届いた郵送票も開票の対象にすると決めた。トランプが勝ちそうだとわかった段階で、民主党側が、郵政公社の集配システムの中にバイデンと書いた偽造票の束を紛れ込ませ、正規の票のように見せかけて開票対象の中に入れれば、追跡もされず、劣勢だったバイデンがじわじわと優勢になっていく。だから民主党側は「すべての票を開票せよ」と主張し、バイデンは「時間が経てば優勢になる」と表明し、トランプは「開票をいったん停止せよ」と主張している。 (Trump Is Poised To Win The Election. Now He Has To Stop The Steal) (Dems Insist Biden Won The Election, Ready For All Legal Challenges

民主党側が選挙不正をやっても、マスコミは民主党支持なので調査もしないし報じもしない。広範な不正があっても暴露されず「事実」にならない(細かい不正だけ暴露し裁かれる)。米国の選挙は昔からいろんな方法で不正が行われてきた。手口の中にはなるほどと思える事実っぽいものも多かった。以前は、投票用と集計用のタブレット(Windows CE)にソフトウェア的な裏口が設けていた。大学の先生がそれを指摘し、裏口を使った不正を実践してみせた。だが、この手の広範な選挙不正が公式に暴露されることはなく、いつも陰謀説として処理されてきた。巨悪は眠る。今回もそうだろう。 (不正が横行するアメリカ大統領選挙

米国の選挙は、投票する有権者でなく、開票する選挙管理委員会が(不正によって)勝敗を決める。そんな揶揄の記事も出ている。確かにそうだ。トランプからバイデンに優勢が替わったミシガン州のデトロイト(都会なので民主党支持が多い)では、開票所の窓の外から共和党支持者たちが開票作業を監視ししていたが、選挙管理委員会が、窓に紙を貼って監視できないようにしてしまった。選挙管理委員会を支配しているのが民主党であることがわかる。偽造票の束を、開票所に持ち込むのでなく、郵便局の集配振り分け室に裏口から民主党支持者の郵便局員を通じて持ち込んで集配システムの中に入れてしまえば、簡単に不正ができる。選管が票の偽造に絡んでいるのだろうから、偽造票と正規票を見分けるのは困難だろう。 ("Those Who Vote Decide Nothing. Those Who Count The Vote Decide Everything...") (Detroit Ballot-Counters Board Up Windows, Block Republican Poll-Watchers

トランプ陣営はウィスコンシンでの再開票を求めているが、偽造票を見分けられない以上、開票作業をやり直しても結果は同じだ。ウィスコンシンは2016年の選挙でも再開票したが、結果は130票しか違わなかった。再開票は意味がない。トランプ陣営は、いくつかの州の開票について最高裁判所に訴えているが、裁判所は検討に時間がかかりすぎ、選挙結果を変えたり確定したりするのにふさわしい機関でない。それは、すごく膠着した2000年のブッシュvsゴアの大統領選の際に経験ずみだ。裁判所への提訴も意味がない。再開票も裁判所もダメだとなると、もうトランプには打つ手がない。不正が行われていたとしても、よっぽどの証拠をすぐ出せない限り、いったん確定した各州の選挙結果を変えることは困難だ。マスコミ各社がバイデン勝利を宣言した段階で、トランプの敗北が確定してしまう。マスコミは歪曲報道をしているが、歪曲を是正するには「別の事実」が必要だ。何が事実かを決める権限はマスコミが持っている。マスコミはトランプ敵視だ。 (Trump's narrow path to the Supreme Court) (Trump campaign to immediately request recount in Wisconsin

民主党には「暴動」という奥の手があった。トランプが勝ったら、大統領府の前など全米各地で民主党左派の組織が暴動を起こすことになっていた。11月3日に、その前哨戦のような小さな暴動が大統領府の前などで起きた。だが、それから1日経ってトランプが負けそうなので、暴動は拡大していない。次に暴動が再燃するとしたら、それはトランプが延々と敗北を認めなかった場合だ。BLMなど民主党左派の暴力集団は、大統領府を本格的に襲撃してトランプや側近を追い出すと言っている。民主党には、全米で手際よく暴動を起こせる強い暴力集団がいる。コロナ危機の初期から、彼らの「技能」の高さは有名だ。だが、トランプには同様の奥の手がない。マスコミは、トランプ支持者を「極右暴力集団」」と呼ぶが、彼らは少なくとも今のところバラバラな感じで、全米で手際よく暴動を起こした実績もない。トランプの支持者といえば、逆に、自分のトランプ支持を周りにも言いたくない「隠れトランプ支持」が多い。彼らが突然街頭に出て民主党の選挙不正を糾弾するかというと、多分しない。隠れトランプ支持者は闇から闇に消え、ノンポリに戻る。 (DC Police Confirm Stabbing Attack On 4 Trump Supporters Near White House

トランプはこの4年間で、軍産マスコミ民主党からかけられたロシアゲートの濡れ衣を跳ね返し、返す刀で諜報界の軍産支配を突き崩し、諜報界を牛耳るまでになっていた。だが諜報界は分散型のネットワークであり、軍産の勢力があちこちに残っている。彼らが今回の選挙でトランプに反撃し、かなり成功している。トランプは急速に劣勢になっている。何週間も続くと思われた選挙後の膠着状態と混乱は、数日でトランプが敗北を認めて終わる可能性が出てきた。バイデンは、勝利を前提に政権移行チームを結成したという。 (Biden Launches Presidential 'Transition Team', Trump Asks SCOTUS To Intervene

バイデン勝利とトランプ敗北が確定した場合、共和党ではトランプ支持の勢力が急に弱まり、それ以前の軍産エスタブの勢力が復活する。彼らは、バイデンやペロシといった民主党の軍産エスタブ勢力と合体し、超党派で米国の覇権体制を蘇生しようとするだろう。民主党は一枚岩でなく、中道派と左派の内紛が強まる。超党派の中道派(軍産エスタブ)が、民主党の左派を押さえ込めるかどうかが注目点になる。左派は、覇権や軍産エスタブ、金持ち支配を敵視しており、諜報界の別働隊でもある。エスタブが左派を抑え込めないと、かつて「文化大革命」が中国を自滅させたように、左派は米国を内側から自滅させていく。共和党では「ネオコン」も復活してくる。中露や同盟諸国は、以前のように米国の言うことを聞いてくれない。覇権の自滅はまだ続く。

今回の記事は昨日の反動で、かなり悲観的な書き方になった。今後の展開を見ながら修正していく。



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