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ジャーナリズム要らない

2025年10月23日   田中 宇

米国の戦争省(国防総省)が、省内の記者室のマスコミなどの記者たちに対し、省内から匿名でリークされた情報で書いた記事、正式発表された情報以外の記事を報道しないよう、誓約書に署名しろ、さもなくば記者室に入れず、記者発表会に参加できない、という新規則を適用した。マスコミのほとんどは署名を拒否し、10月15日に荷物をまとめて記者室から退去した。
これまで国防総省に関する米マスコミの重要報道の多く、とくに特ダネはすべて、省内からのリークをもとに書かれていた。
Reporters Leave Pentagon En Masse After All But One Outlet Rejects New Rules
Trump To Attend Hegseth’s Meeting of Hundreds of Generals and Admirals

マスコミなどジャーナリズムの任務は、政府が間違った政策を進めていないか監視することであり、政府の隠しごとを義侠心のある政府幹部らがジャーナリストにリークして報道してもらい、間違いを是正するのがリークの(建前的な)意義だった。
そのような「正しい行為」であるリークの報道を禁じるトランプ政権は、ジャーナリズムの重要な役割を潰そうとしており間違っている。記者室の記者の多くは、そのように考えて新規則への署名を拒否し、記者室を退去した。
And The Legacy Media Wonders Why Nobody Trusts Them

記者室に入れないと戦争省の正式発表に参加できないが、記者室に入れなくても省外でリーク元に会えばリークを受けられる。
だがトランプ政権は、リークを受ける記者の側だけでなく、リークをする側の戦争省の幹部たちにも、リークに対する処罰を厳格化している。
Pentagon staff face random lie detector tests

戦争省は10月初め、世界各地に駐留している米軍の幹部たち800人を米国に集めて会議を開いた。
会議の内容は、トランプ大統領やヘグセス戦争長官らが演説するなど中身の薄いものだったが、会議の前後に、米国に集まった軍幹部たちの一部(民主党支持者たち)に対してウソ発見器を使った尋問が個別に行われ、リークをしたことがあるか、今後しそうかどうかなどを調査した。
US War Chief Summons Hundreds of Generals and Admirals for Urgent Meeting
Generals Gathered In Their Masses

これらの動きに先立ってトランプは9月初めに、国防総省を戦争省と改名した。戦争だから機密保持は当然でリークは犯罪だという話にできる。
ここ数年の国防総省は、民主党バイデン政権下などで「米国にとって最大の脅威は地球温暖化なので国防総省も温暖化対策を最重視する」とか「覚醒運動がとても大事なのでジェンダー混乱した人々などを積極的に雇用・登用する」といったお門違いな政策をどんどん展開しており、米軍を弱めてきた。戦争省への改名はそれを是正する意味もある。
米民主党自体が(2020年に選挙不正でトランプを蹴落として)認知症のバイデンを大統領にしたあたりから、温暖化対策や覚醒運動やmRNAワクチンやウクライナ戦争など、米欧(英国系覇権)を自滅させる動きを急拡大してきた。国防総省が自滅策をやらされたのはその一環だ。
Trump to rename Pentagon, restoring historic ‘Department of War’ in latest military move

これらの自滅策は、911以来英国系を追い出して米諜報界を握ったリクード系の仕業な感じがする。ほかに、これらの奇妙な策をやりうる隠然大勢力がいない。
イスラエルを強化したいリクード系が、すでにイスラエルの傀儡である米国の軍事力を自滅させるのはおかしい。だが、リクード系の仕業に見える。
私の見立ては、もともとリクード系を誘い込んで911をやらせて米諜報界を乗っ取らせたのはロックフェラーなど隠れ多極派で、リクード系は多極派との約束に沿って米覇権を自滅させる策を展開し、米覇権が完全に破綻するまではリクード系が米諜報界の情報を自由に使ってイスラエルを強化している、といった感じだ。
Hegseth Shows Legacy Media Outlets The Door Amid Revolt Against New Pentagon Press Policy

諜報界は大量の機密情報を持っており、金融界の起債機能などと連携し、相場操縦など、金融システムを裏から操作できる。米金融バブルが崩壊したら米覇権も破綻するが、リクード系は最近、相場を高騰させてバブル維持して米覇権を延命させている。
だが、米サブプライム自動車ローン会社の破綻は3社目のプリマレンドが倒産して確実に広がっており、バブル維持はしだいに難しくなっている。不合理な相場高騰と、金融危機の露呈による暴落が交互に起き続けそうだ。末期的な事態といえる(末期が何年も続くかもしれないけど)。
Another 'Cockroach': Subprime Auto-Lender PrimaLend Enters Bankruptcy
突然金融危機になるかも

911以来の、リクード系と多極派が英国系と米覇権を自滅させて世界を多極型に転換する流れは、今年のトランプ返り咲きによって、山を越えて後半戦に入った観がある。
トランプは、既存の(英傀儡にされた)米国が欧州を引き連れてロシア(や中共)を敵視する英国系の覇権戦略を破壊し、プーチンのロシアと交流を重ねつつ、欧州に対して邪険な態度をとっている。
欧州内でも、ハンガリーやスロバキアに加え、右派政権のイタリアがEUを見捨ててトランプに接近している。
L’Italie s’eloigne des positions de l’Union europeenne sur l’Ukraine

トランプは、英傀儡的な単独覇権体制を破壊するとともに、米国の戦略を、南北米州中心(米州主義)に変え、手始めに麻薬戦争の名目でベネズエラを攻撃してマドゥロの左翼政権を転覆しようとしている。
トランプが、国防総省を戦争省に改名した背景には、この単独覇権体制の放棄と米州主義への転換もある。
戦争省内では、民主党支持者(リベラル左翼)など、このトランプの戦略転換に反対している勢力も多い。彼らは、トランプの策を妨害するために、省内の機密を、リベラル左翼の同志であるマスコミにリークして書かせようとする。
トランプは、彼らの敵対的な策略を阻止するために、省内勢力とマスコミの両方に、リーク報道を禁止する策をとっている。
Many American military personnel criticize the new defense strategy

リベラル左翼や、小役人気質な人など、多くの人々はいまだにジャーナリズムを良いものだと思っている。マスコミは悪だけどジャーナリズムは善だ、とか。権力を監督・是正するジャーナリズムがなくなったら悪い権力がはびこるよ、とか。
実のところジャーナリズムは、遅くとも1972-74年のウォーターゲート事件あたりから、米国(や欧日)政府などの権力が、英国系(英傀儡、単独覇権体制)から逸脱していかないように監視するために機能してきた。
米国の上層部(政界や諜報界)では戦後、戦前の英覇権(大英帝国)の世界体制を米国に移植(米国を英国の傀儡に)して維持しようとする英国系と、そうした英国系の謀略を破壊しようとする(そのために必要な覇権の多極化を目指す)隠れ多極派(ロックフェラーなど)が暗闘してきた。
(2度の世界大戦も、本質は、しつこく世界支配を続けようとする英国系と、それを打破して新しい世界体制を作ろうとする米独などの勢力との対立だったが、ドイツは惨敗させられ、米国は冷戦体制を作られて英傀儡にされた)
Rogan Rages At Media Silence On UK's "Orwellian Nightmare" Free Speech Crackdown

多極派がニクソンを擁立して大統領に押し上げ、ニクソンはドル体制(金本位制)の破壊や、冷戦終結を目指した米中和解など、英国系の米覇権体制を壊す策を展開した。
これに対し、戦後英MI6の複製物として米CIAを作って米諜報界を創設支配してきた英国系は、諜報界からのリーク機能を多用してマスコミにニクソンを攻撃させ、ニクソン陣営が民主党をスパイしていたことを針小棒大な極悪に喧伝させてウォーターゲート事件を仕立て、ニクソンを辞職に追い込んだ。
ニクソンは中国と和解してテコ入れしたかったが辞職させられたので、替わりに日本の田中角栄の自民党政権が、ロックフェラーなどから頼まれて中国と仲良くし始めた。
英国系は、この日本の動きを破壊するためにリーク機能などを多用してロッキード事件を起こし、文芸春秋などのジャーナリストらが田中角栄を辞職に追い込んだ。
これら事件は「正義のジャーナリズムが極悪なニクソンを退治した」「輝かしいジャーナリズムの勝利」と喧伝され、それを軽信した若者たちがマスコミに就職したがった(昔の私自身とか)。
Trust in Media at New Low of 28% in U.S.

実のところ、輝かしいと軽信されたジャーナリズムは英傀儡であり、英国系が作った世界体制を転換しようとする勢力に極悪のレッテルを貼って潰すための活動をさせられていた。
鋭く世界分析すべきジャーナリスト自身が、自分たちがしていることを分析できず軽信させられ、嬉々として英国系の敵に極悪のレッテルを貼る英傀儡な作業を頑張った。
Kremlin explains why Putin avoids social media

多極派はニクソンの失敗の教訓から、次に多極化を進めたレーガンは最初、ソ連を悪の帝国と呼び、軍事費を急増するなど、英国系が好むソ連敵視の冷戦構造を猛烈に進め、その後でゴルバチョフと仲良くしていき冷戦を終わらせた(米国と和解したいゴルバチョフに便乗した)。
最初は猛烈に英国系の策略を進める目くらましをやりつつ、実のところ英国系の世界体制を破壊するレーガンの手口は、911事件とテロ戦争を起こして米諜報界に入り込んだリクード系(新レーガン主義を標榜したネオコンなど)に継承された。
目くらましを食らわされたジャーナリズムは、レーガンやテロ戦争を有効に非難攻撃できなかった。
Trump Turns Pentagon Into Department of War on First Amendment

ジャーナリズムの大半は覇権と全く無関係だぞと反論してくるジャーナリストやリベラル派がいそうだが、ウォーターゲート事件や田中角栄金脈事件は、米日でジャーナリズムが礼賛されるようになった画期的な発祥点だ。無関係ではない。自らの信条の起源を知った方が良い。
中露やトランプがのさばる多極型世界よりも、英国系が米国やジャーナリズムを傘下に入れて守ってきた単独覇権体制の方がましだという、うっかりでない英傀儡もいそうだ。だが、そもそも中露やトランプに極悪なレッテルを歪曲的に貼ってきたのも、英傀儡なジャーナリズムの「功績」だ。英国系が歪曲した善悪観を喜んで軽信するのが、敗戦後の日本人の「あるべき姿」でもあった。
Weaponized Scoops: New Russiagate Documents Expose Media/Government Collusion

日本の小役人たちは永久に英国系に支配されたいだろうが、トランプは英国系による米国と世界の支配を終わらせたい。トランプが、戦争省でのリークを禁じるなど、英傀儡であるジャーナリズムやリベラル派を潰そうとするのは当然の動きだ。
West instructed Russia on freedom of speech for years, now it wants to ban it - Putin

米諜報界をリクード系が握った後のここ数年、諜報界は、ジャーナリズムなどリベラル派(英国系)に対し、mRNAワクチンなど新型コロナの超愚策や、地球温暖化人為説、ウクライナ戦争でのロシア敵視など、リベラル派が強い米欧を自滅させる方向の、軽信や政策強制、言論統制(リベラル全体主義化)を誘導した。
米民主党や英独仏の左右エリートなど、リベラル派は誘導に乗せられて超愚策をゴリゴリ進めて自滅を加速した。多くの人々がリベラル派に愛想を尽かし、トランプや独AfDなどの極右が強くなって政権をとる方向にある。
英国系=リベラル派は弱体化し、諜報界でも政界でも力を持てなくなっていく流れが確定した。そのため、英国系の敵たちは、英国系を怒らせてじっくり自滅させていく心理作戦に転換している。
Get Woke, Go Broke: Hollywood Productions Plummet To All Time Lows

これまでの世界では、人々に良い印象を持たれることが「勝利」の秘訣だった。勝てば官軍。日独は敗戦したので極悪なレッテルを貼られた。
しかし、近年の英国系の敵たち(米露イスラエル)は、この不文律を意図的に破っている。トランプは、人々に信用されたくないかのように発言をころころ変えるし、リベラル派を怒らせる策を意図的にやっている。イスラエルのガザ戦争も、巨大な人道犯罪であり人々を怒らせている。プーチンのロシアは、ブチャの「虐殺」など、ウクライナ側がロシアを陥れるために捏造した事件に対して本格反論せず放置する偽悪戦略をやっている。
プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類
英国系潰し策としてのガザ虐殺

これらはいずれも(うっかり)英傀儡なリベラル派やジャーナリストを怒らせるために展開されている。米国のリベラル派は、トランプやリクード系に乗せられて怒りを募らせて過激化し、暴徒やテロリストのレッテルを貼られて取り締まられ、潰される。
リベラル派(欧州エリートなど)はイスラエルを敵視するほど、リクード系が支配する諜報界から情報をもらえなくなり、失策を重ねて支持を失う。プーチンが欧州を怒らせるほど、欧州はロシア敵視に固執して敗戦していく。
リベラル派は、大間違いな温暖化問題で石油ガス敵視を続け、エネルギー政策で失敗を続け、欧州経済を自滅させていく。コロナワクチンを連打したリベラル派は免疫が低下して発癌する。
If It's Worse Than Watergate, Why The Silence?
リベラル世界体制の終わり

かつて輝かしかったジャーナリズムは、今や「事実」と称する間違った「あるべきだ論」を繰り返し、人々に愛想を尽かされている。
ジャーナリズムは早く消失した方が良いのだが、ジャーナリストのほとんどはそれに気づいていない。馬鹿である(だからジャーナリストやってる)。
He Co-Founded Wikipedia, Now He Says The Site Needs A Radical Change



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