上海からの手紙・日本人駐在員の苦労話

97/02/18


 赤いネッカチーフの話を書いて送ってくださった日本人駐在員の方からのメールはまだある。
(以下、引用)

 私の会社は多くの中国人スタッフを雇用しています。最近、新たな人材を募集したのですが、1000人近い大卒者が応募してきました。3年ほど前までは、優秀な大卒者を採用するのはかなり大変な仕事でしたが、今回はそれまでの苦労がウソのように、次から次へと優秀な大卒者がやってきました。

 この変化の背景にあるのが、国有企業の失業問題です。国有企業と外資系企業を比べると、給料は外資系の方が多いのですが、国有企業の方が仕事が楽ですし、社会福祉も充実しています。そのため、必ずしも外資系の人気が高いわけではありませんでした。ところが昨年から、国有企業の経営が悪化するとともに、国有企業の将来性に不安を感じる人が増えたためか、外資系への希望者が殺到し始めました。

 業種でみると、中国人はメーカーより金融機関を好みます。社会でのステイタスも金融機関の方が高いようです。金融機関だと、初任給は月に3000元(3万5千円程度)でしょうか。一般に、日本人の駐在員は5年以内に転勤になりますし、中国当局の諸規定は大変に煩雑な上、ころころ変わるので、日本人駐在員には手が出ません。そのため、業務の細かい点は中国人スタッフに任せることになり、そこが彼らの強みになります。

 外資系企業の中国人スタッフは、語学のレベル、自己表現能力、チャンスに対する貪欲さなどの点で、日本の大学生の比ではなく、優秀です。とはいえ、日本人社員からみると、中国人スタッフは必ずしも使いやすくはありません。仕事の指示は毎日出さねばならず、しかも彼らは理屈が通らないと納得しません。日本企業の行動原理を分かってもらうのは、かなり根気がいる仕事です。

 ある合弁企業の熱血駐在員が、中国人スタッフのあまりのいい加減な仕事ぶりに怒り、提出された書類を投げ返したところ、中国人を虐待したとされて、後で大変な問題とされ、その駐在員本人が強制帰国させられたという例も聞いています。

 実際、中国で駐在員をするのは大変です。私が知っているだけの範囲内でも、去年は毎月1人のペースで、日本人駐在員が死去されました。最も多いのは50歳以上の年配の方々で、死因の多くは心臓発作と脳溢血です。その年頃だと、現地法人の責任者を任されるのですが、異文化の中での生活に加えて、中国人スタッフを使う上での苦労、ころころ変わる中国当局の行政、日本の本社の無理解などが負担となります。しかも、中国での駐在員生活は、いつも誰かに監視されているような気分にさせられます。これらのことが重なり、ストレスが高まるのです。

 なお、このレポートは匿名での掲載をお願いします。飲み友達から聞いた話ですが、中国在住のある外国人がインターネットでアダルトページを楽しんでいたところ、プロバイダーの記録を見た(作者注・中国でのインターネット利用は、当局の監視下にある)公安職員が突然自宅にやってきて、罰金をとられたとのことです。真偽のほどは分かりませんが、そんな状況ですので。
(引用終わり)

 日本で気楽に生活している作者がコメントするのはおこがましいと思うような話だと思う。


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