最近の世界の動き 97年3月21日


●中国


○チョウ紫陽が、江沢民を批判する公開書簡を発表?。ガセネタの可能性も。

 天安門事件で失脚した中国の元首脳、チョウ紫陽氏が、江沢民氏が権力を独占しすぎていると批判する書簡を発表したと報道された(エイシャン・ウォールストリート・ジャーナル=AWSJ=)。
 だが、香港の星島日報によると、「1万字講話」と呼ばれるこの書簡は、チョウ氏が書いたものではなく、偽物である可能性が強いという。

 (作者の考え)誰が書いたにしても、トウ小平氏死去後の権力闘争の道具の一つになっていることは確かだ。偽物だとしたら、経済政策に強いといわれるチョウ氏の復活を推す声が高まっていることを利用して、国有企業立て直しなどの経済政策で成功していない江沢民政権を批判しようとするものだろう。


○ロシアからの武器購入を増やす中国

 かつては犬猿の仲だった中国とソ連だが、ソ連の崩壊とともに、ロシアは買ってくれるところには、どこでも武器を売る、という姿勢に変わった。中国は、台湾やその後ろに控える米国第7艦隊に対抗できる兵力を持とうと、昨年末以来、ロシアから新型ミサイルなどを買い始めている。米国や台湾は警戒を強めている。(ファー・イースタン・エコノミック・レビュー=FEER=)


○河南省の炭鉱でガス爆発、86人死亡=北京政府が事故を知ったのは、発生から3日間以上たってからだった(AWSJ)

 炭鉱の経営者一族は、事故直後から失踪した。上部に報告して叱責されたら嫌だ、という官僚制と合いまって、北京への報告が遅れたのだろう。先の日本の原子力事故でも、通報や対策の遅れが批判されているが、隣国もなかなか大変なようだ。


○ダライラマが22日から台湾を訪問する。

 台湾仏教会の招待を受けたもの。中国は台湾よりダライラマを、より強く攻撃している。人民日報はこの訪問について「誰であれ、分離独立の道を遠くまで行こうとする者は、激しい攻撃を受けて滅びるであろう」と書いている。まるでオウム真理教だ。(APなど)


●朝鮮半島、日本


○台湾が捨てた核のゴミを使って北朝鮮が核兵器を作る?

 FEERによると、台湾は北朝鮮に核廃棄物を捨てる計画を進めているが、北朝鮮がその廃棄物を使って核兵器を作りかねない、という懸念が広がっているという。ほんまかいな、という感じだが。


○韓国の金泳三大統領は、北朝鮮が南を攻撃してくる可能性が高まっている、と述べた。


○現代、三星などの韓国の財閥がリストラに着手している。


○ペルー事件の背景にある日本のテロ対策や諜報活動が駄目なのは、米国による日本統治とその後の安保体制で、米国が日本の情報機関を徹底して無力化し続けたことが原因だ。(AWSJ)

 (作者の考え)今さらテロ対策が下手くそだ、などとかつての連合軍諸国に言われても困ります。大日本帝国型でない情報機関や公安警察を作るのも、なかなか難しいでしょうし。


○東海村の核廃棄物処理施設の事故問題

 ついに起きましたな。何というタイミング。事態が明らかになるにつれ、去年の「もんじゅ」事故に続き、核燃料サイクルの実現は、夢と消えた、というところか。それどころか、軽水炉による従来の原発さえ、米国やフランスを除く欧州と同様、国家のお荷物になっていくかもしれない。(過去の記事を参照)


●東南アジア


○パプア・ニューギニア(PNG)で傭兵がらみのごたごた

 PNG軍総督が辞任。ブーゲンビル諸島の反乱鎮圧に、英国系傭兵派遣会社を雇おうとしたPNG政府に対して、自分たちの勢力低下につながりかねないことを恐れた軍が反発、クーデターを起こすと脅し、政府の軍事担当総督が辞任、傭兵利用は実施しにくい形となった。(ロイターなど)
 アフリカ・ザイールの内戦でも、南アフリカの傭兵派遣会社が、セルビアや旧ソ連で職を失った元兵士を傭兵として雇い、前線に送り込んでいる。


○バンコクのブティックはガラガラ、開店休業状態(AWSJ)

 タイもバブルの崩壊で、一時は贅沢な暮らしをしていた人々が、今や多重債務者に転落している。その余波で、バンコクのデパートやショッピングセンターにあるブティックや各種のお店は、お客が激減してしまった。経済急上昇を当て込んでお店がどんどん作られたため、過当競争になっている。しかし、筆者の周囲のタイお宅の人々によると、タイ人には日本人にないエネルギーがあるので、比較的短期間でバブルから立ち直ることができるに違いないという。日本と違うどんな立ち直りを見せてくれるのか、これからが楽しみだ。


○シンガポールのリー・クアンユー氏、頭を下げる

 3月中旬の各紙によると、シンガポールの野党政治家は、先の選挙で与党をひぼう中傷したとして、与党から訴えられて敗訴した。被告本人はシンガポールの対岸にあるマレーシアのジョホールに行ったまま「シンガポールは身の危険を感じるので、戻りたくない」と言っている。
 これを聞いたリー・クアンユー氏は「ジョホールは泥棒が多くて、シンガポールよりずっと危険だ。そんな場所に逃げ込んで、危ないから帰りたくない、などと言う奴はおかしい」と言った。するとマレーシア政府が「ジョホールは泥棒が多い、というの発言は、マレーシアを侮辱するのものだ。あやまれ」とかみついた。リー氏は謝った。

 (作者の考え)この事件の背景には、マレーシアが経済発展を成功させて自信をつけ、シンガポールへのライバル意識を強めていることがあると思う。一方、リー氏だけでなく、シンガポール人は総じて、以前からマレーシアを馬鹿にする傾向があった。


○カンボジアの北朝鮮大使館は、電気料金を払えず、電力会社から、供給を止めるぞ、と脅されている(FEER)

 本国からの送金もほとんどないだろうし、偽札作りも失敗し、食いぶちがない状態になっているのではないか。


●イスラム世界


○パレスチナの東エルサレム近郊でイスラエルによるユダヤ人入植者用の住宅の建設が始まった。

 ここは、パレスチナの他地区からエルサレム市内に行く際に、必ず通らねばならない地域で、そこをユダヤ人がブロックする形で住むことになる計画が進行している。パレスチナ人は当然、怒っている。
 パレスチナ国家は、イスラム教徒にとっても聖地であるエルサレムに新国家の首都を置きたいとしているが、イスラエルの入植都市建設は、これを妨害するイスラエルの戦略であるととらえられている。(3月19日各紙)

○トルコ支持にようやく動き出した欧州

 トルコでは、イスラム色を強める政府とイスラム教組織、VS、欧米流の政教分離を守りたい軍部や野党、市民グループという対立の構図が鮮明になってきている。
 欧米派の人々は、EUに入れてもらい、経済発展を実現することで、イスラム主義者たちを黙らせたいところだが、肝心のEUは、キリスト教徒の連合体でもあるため、イスラム教系の国を入れたくない、という意識がある。そのため、クルド人に対する人権侵害などトルコの欠点を持ち出して、EUに入れようとしない姿勢をとり続けている。仇敵ギリシャがトルコのEU加盟に反対しているということもある。
 だが、このままではトルコがイスラム化してしまうとの危機感を覚えた米国政府や欧米の多国籍企業が、EU各国に働きかけた結果、ようやくEUはトルコに対する姿勢を和らげてきている。
 多国籍企業にとってはトルコは、東方のカザフスタン、トルクメニスタンなど、地下資源が豊かな中央アジアのトルコ系諸国につながる道として、大切にしなければならない存在だ。トルコを敵に回すと、中央アジアも敵に回すことになり、中央アジアの石油、天然ガス、ダイヤモンドなどを掘り出すことができなくなる。
 イランやイラク、シリアなどへのにらみを効かせるという軍事面から見ても、NATOの東の要であるトルコが反欧米に転じるのはまずい、と米国政府は思っている。宗教、経済、軍事が複雑に絡んだ話である。


●米州

○南米スリナムでも「ピラミッドねずみ講」被害

 アルバニアと同じ系列の金融破綻が起こりつつある。スリナムはオランダの元植民地で、被害者の中には、オランダの人々も含まれているという。(フィナンシャル・タイムス)


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