中国の知的所有権が日本に侵されている!?

1996年7月14日

 米国流のヒステリックな攻撃に始まり、結局米国側の本来の目的である中国市場への食い込みをあまり達成できずに終わった米中知的所有権紛争であったが、その動きに目覚めたのか、中国政府は6月上旬、「中国の有名ブランド名だって海外の人々に盗用されている」との意志表示をした。しかも、特に日本における侵犯が目につくというのだ。

 一体何のことだ?。実は、中華料理レストランの名前や中国茶、中華風味のお菓子の名前などの登録商標を無断で盗用しているという話である。

 6月8日付けの香港の新聞「明報」によると、中国政府が指摘したのは「狗不理」(コウプリ。東京にある中華レストラン)、「全聚徳」(日本のレストランか?)、「同仁堂」(漢方薬の店)、「紅塔山」(煙草。フィリピンでも売られている)など。中国政府によると、盗用されている商標は、欧州で150以上、日本で100以上、インドネシアで48ある。元祖の中国企業が製品の輸出など海外進出を始めようとして登録商標の申請をすると、そのうち15%程度がすでにその国の企業によって登録されてしまっている後だという。

 明報によると、このうち「狗不理」は元祖が天津にあり、そこからの求めにより中国の貿易促進会が日本の関係者に対して国際問題として提起し、解決した。「全聚徳」についても解決している。一方、「紅塔山」は元祖企業が雲南省にあるが、フィリピンでは元祖と全く同じ包装で、「紅塔山」として売り続けているという。中国貿易促進会の担当者は「全ての案件を国際問題にして解決したいところだが、とりあえず、すでに中国側に被害が出ているものから順番に解決していくことにしている」としている。

 この話を読んで思い出したことがある。日本文化の根幹を揺るがす、日中間で最大の知的所有権問題、すなわち漢字のことだ。「中国は1500年以上前に日本人に漢字の無償利用を認めて以来、一度も使用権を払えなどと言ったことはなかったのだ。ありがたいと思え」というような言葉を、中国の人から聞いたことがある。

 このテーマは日本企業が中国進出した際にも、宴会の席などでそれとなく、しかし「われわれの方が中国人よりはるかに優れている」と思っている日本人の心をチクリと刺すように提起されるのだという。中国の奥の深さを思い知らされる話ではないか。





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