トップページへ

「田中宇の国際ニュース解説」1997年の記事一覧


これより後の記事(1998年の記事)

危険がいっぱい? 世界の空の旅
 【1997年12月27日】 冷戦の崩壊と航空運賃の値下がりで、世界中どこへでも飛行機で気軽に出かけられるようになった。だがその裏で、旧ソ連やアフリカ、中南米では、安全性の向上が空の混雑悪化に追いつかず、事故が増えている。乗客は知らないが、パイロットにとっては背筋が寒くなるような経験も多くなっている。

クリスマスにちなんだ世界情勢
 【1997年12月24日】 キューバでは初のローマ教皇訪問を前に、28年ぶりにクリスマス休日が復活した。一方、中東のパレスチナでは、キリストゆかりの2つの町、ベツレヘム(パレスチナ領)とナザレ(イスラエル領)との間で、西暦2000年の巡礼祭を目指した観光客の呼び込み合戦が始まっている。

香港市民をパニックに陥れた「鶏インフルエンザ」
 【1997年12月19日】 香港で、ニワトリから人間へと感染するミステリアスなインフルエンザが流行し始めている。致死率が高いが有効なワクチンがまだ作られておらず、世界に広がって猛威を振るう可能性もある。鳥から人への直接感染は、これまでの常識では考えられないことだが、今回の発生により、インフルエンザそのものの根絶に役立つかもしれない、との期待もある。

敵と味方が逆転しはじめた中東情勢
 【1997年12月18日】 アメリカ対イラン、イラン対イラクといった、これまでの中東の敵対構造が急速に溶解しはじめている。一方、強い信頼関係があったはずのイスラエルとアメリカの関係が危うくなっている。ソ連崩壊後、権力の真空地帯となった中央アジアの莫大な地下資源の存在が、回りまわってイスラエルの孤立につながっている・・・。

地球温暖化京都会議への消えない疑問
 【1997年12月16日】 二酸化炭素は本当に、地球温暖化の主因なのだろうか。いくつかの資料をひも解くと、地球温暖化のメカニズムには、まだ不明な点が多く、二酸化炭素による悪影響についても確定できない部分が多い。それなのに京都会議の議定書には、強力な二酸化炭素削減策が盛り込まれてしまった・・・

中国よりアメリカの一部になりたい台湾
 【1997年12月11日】 11月末に台湾で行われた選挙は、台湾独立を目指す民進党が初めて勝利した。中国が武力以外の方法で台湾を併合することは難しくなっている。アメリカの政治状況に似た、国民党と民進党の2大政党制が定着しつつある台湾の現状は、実は国民党がアメリカに見放されないよう、10年がかりで実現させた策だったのではないか・・・

韓国の威信を傷つけた「経済進駐軍」IMF
 【1997年12月10日】 韓国に対するIMFの厳しい政策は、人々の強い反発をかっている。1980年代の中南米で成功した手法と同じことを韓国でやって成功するのかという懸念もある。しかし日本と同様、政治家や官僚が大胆な改革をしにくい韓国では、外圧による大変革がいずれプラスに作用するかもしれない。

50年たって暴かれるナチス財宝の謎・南米編
 【1997年12月06日】 ブラジルの銀行に眠る5億円の財宝は、ナチス再興のための隠れ資金だったのか?。ナチスの財宝を暴こうと、徹底調査を続けるユダヤ人団体は、当時のアルゼンチン政府がナチスの亡命に手を貸したことも攻撃している。「エビータ」の顔にも泥が塗られかねないのである。

50年たって暴かれるナチス財宝の謎・スイス編
 【1997年12月05日】 ナチスが、戦争中に占領した国々や収容所に送ったユダヤ人から奪った財宝は、スイスを通じてマネーロンダリングされ、国際市場で売却されていた。そして戦後もスイスの銀行には、ナチスの財産が休眠口座として存在し続けている。50年たってようやく、この件に関する国際会議が開かれた。

日本の次は中国か ? :アジア経済危機
 【1997年12月03日】 アジア各国を襲った金融危機を避け、唯一無傷で残っている中国。だが、銀行の巨額不良債権など、危ない条件はいくつかある。中国の経済自由化政策の進行が遅れていたことが、皮肉にも危機を回避する効果をもたらしたのだが・・・

輝き失いつつある「黄金神話」
 【1997年12月02日】 金の国際相場が12年ぶりの安値をつけた。世界各国の中央銀行が、それまでは通貨価値の裏付けとして大金庫にしまってあった金塊を、売却し続けているためだ。もはや、古代から続く「永遠の価値」としての金の役割は終わったのだろうか。

アメリカを孤立させた策略家、サダム・フセイン
 【1997年12月01日】 湾岸戦争で敗れ、その後7年間も経済封鎖されているイラク。だがフセイン大統領の力は弱まるどころか、自国内の石油資源や兵器開発疑惑といった外交カードを使って、国際社会を相手に、したたかな策略を展開し、逆にアメリカを追いつめてしまった。

金融不安の背景に世界的な「市場経済化」の矛盾?
 【1997年11月25日】 日本や韓国で起きている金融不安の根本的な原因は何なのか。明快な答えは見出しにくいが、1980年代から続いている世界的な「市場経済化」に伴う副作用なのではないか。

北朝鮮から帰国した「妻」たちが背負う重い歴史
 【1997年11月21日】 テレビや新聞を見ても、知りたいことがほとんど分からなかったのが、北朝鮮在住日本人妻の一時帰国だった。彼女たちが北朝鮮に渡ってからの30年以上の間には、北朝鮮の権力闘争やその後の政策硬直化といった、激動の歴史があった。その経緯を知れば、彼女たちが背負うものが、少しは推測できそうである。

なぜエジプトで観光客が殺されねばならなかったのか
 【1997年11月19日】 ルクソールで日本人観光客らが殺された無差別テロ事件は、観光客がエジプトに来ないようにすることによって、アメリカ寄りの政策を続けるエジプト政府に打撃を与える意図があった。ヨーロッパでエジプト観光がブームになっている矢先の事件だった。

バブルに溺れた北海道拓殖銀行
 【1997年11月17日】 地盤の北海道の低成長に満足できず、不慣れな東京や関西のバブル不動産に融資を注ぎ込んだ拓銀が、ついに解体されることになった。もう、日本の金融機関は、大手でさえ、「お上」(大蔵省)に守ってもらえて安泰、とは言えなくなった。その背景には容赦ない金融の国際化がある。

史上最悪のアマゾン森林火災
 【1997年11月13日】 エルニーニョによる異常乾燥で、森林が燃えているのはインドネシアだけではない。世界最大の熱帯雨林地帯であるブラジルのアマゾン川上流地域でも、広範囲な火災がおきている。

失われた規範を見つけられない「砂の社会」ロシア
 【1997年11月11日】 ロシアでは6年前のソ連崩壊以来、国の存立基盤を立て直す努力が続いている。欧州型の社会を目指す人、社会主義体制に戻そうとする人、社会主義以前の「偉大なロシア」復活を目指す人が三つどもえになっているのだが、いずれも無理がある。そもそも、ロシアは強権力がないと国家として成り立たない「砂の社会」であることが問題なのだ。

イスラム世界で根強い「ダイアナ謀殺説」
 【1997年11月10日】 ダイアナ元皇太子妃の死去から3ヶ月が過ぎた。日本では不慮の事故死とされているが、中東を中心とするイスラム社会では、人々の多くが「イギリス諜報機関が殺した」と信じている。強い根拠があるわけではない謀殺説が流布し続けるのは、欧米諸国が中東でさまざまな陰謀を行ってきたことの裏返しである。

トルコはヨーロッパの永遠の敵か
 【1997年11月8日】 ヨーロッパ人は16世紀、オスマントルコに攻め込まれて以来、トルコ人を敵視してきた。トルコがEUに入りたいと希望しても、色々な理由をつけて断り続けるのはそのためだ。地中海の島国キプロスをめぐるトルコとギリシャの紛争も、この敵対構造の中にある。">

ワールドカップのテレビ放映を無料にすべきか:ドイツで論争
 【1997年11月5日】 これまで公共放送が取得していたワールドカップサッカーの放映権をドイツの有料テレビ局が落札し、世界を驚かせてから1年、ドイツ政府は「大事な試合は無料で放映しなければならない」とする決まりを定めた。ワールドカップは人類全体の資産なのか、それともテレビ局の契約が優先されるのか、議論は止みそうにない。

自動車作りすぎの韓国でメーカーのし烈な生存競争
 【1997年11月4日】 韓国の大手自動車メーカー、起亜の倒産は、韓国市場が供給過剰になると分かっていながら、強気の見通しで新工場を建てたことが原因だった。日本でも数年前、マツダや日産が同様の苦境に陥ったが、立ち直っている。今や世界中で自動車を作りすぎているという状況の悪さが、韓国自動車メーカーの不運でもある。

人口爆発より高齢化が心配な中国、一人っ子政策を見直し
 【1997年11月1日】 上海などに住む若手エリート夫婦に対して、これまで禁止されていた二人目の子どもを生むことが認められるようになった。多産だった1950-60年代生まれはもうすぐ定年だが、それを数が少ない一人っ子世代が支えねばならない。こうした矛盾に気づいての政策変更なのだが、当の若者たちは、日本と同様、すでに子沢山を望まなくなっている。

アジアからうつされたブラックマンデー10周年の株価暴落
 【1997年10月29日】 ニューヨークなど世界中の株式市場が急落した。1987年10月の「ブラックマンデー」から奇しくもちょうど10年目。今回の暴落が10年前と違うのは、東南アジアの通貨危機に端を発していることだ。以前は「アメリカがくしゃみすればアジアは肺炎」などと言われていたのが逆転してしまった。

欧州で決着した「チョコレート」の定義めぐる25年論争
 【1997年10月27日】 チョコレートの「本場」ベルギーなどでは、カカオ分100%の商品しか「チョコレート」とは呼べないが、ミルクチョコレートが主流のイギリスなどでは、他の油脂を入れてもチョコレートと認めている。経済統合を前に、欧州議会はこのダブルスタンダードに決着をつけた。イギリスなどの勝利であった。

マンデラ大統領はカダフィ大佐に恩返しできるか
 【1997年10月24日】 南アフリカのマンデラ大統領がリビアを訪問し、最高指導者のカダフィ大佐に大歓迎を受けた。アメリカの警告を押し切る形でリビア訪問を実現したことで、マンデラ氏は国連のリビア制裁解除に向け動き出した。その背景には、イギリスの政権交代によりリビアへの敵対姿勢が緩和したという、カダフィ氏の読みがある。

インドネシア通貨危機の裏に「政治危機」
 【1997年10月18日】 インドネシア通貨、ルピアの相場は7月以来40%近くも下落した。政府の対策は良かったものの、東南アジアで最も下落幅が大きくなった背景には、大統領一族をはじめとする、わずか10数家族が、経済の大半を支配しているという不平等がある。

電気のコンセントからインターネットにつなげる?
 【 1997年10月15日】 イギリスの電力会社と、カナダの電機メーカーが、家庭にきている電気の線を通してISDNの10倍の速度でインターネットに接続する技術を開発した。実用化は来年以降になる見通しだが、普及すればインターネットの世界を一変させる可能性が大きい。

返還から100日、香港の意外な安定
 【1997年10月14日】 香港が中国に返還される際に飛び交っていた暗黒の将来予測は、今のところほとんど外れている。中国政府が香港の経済的な繁栄を失わせたくないという戦略が功を奏しているからだ。マスコミも中国にたたかれる前に、勝手に報道姿勢を自粛している。そんな中、董建華行政長官は、香港をシンガポール型の都市にする政策を打ち出している。

イスラエル首相も支持? モサドの暗殺計画
 【1997年10月11日】 9月末、ヨルダンのアンマンで、イスラエル情報機関モサドが、パレスチナ人組織「ハマス」幹部の首に、毒物を注射して殺害しようとした。被害者は一命をとりとめたが、事件に関与していたイスラエルのネタニヤフ首相は窮地に陥った。暗殺遂行の理由については謎も多い。

今年のエルニーニョは史上最悪の可能性
 【1997年10月6日】 来年にかけて、エルニーニョによる異常気象の被害が世界各地で広がりそうだ。エルニーニョは、赤道近くの太平洋の温度異常が世界の気候を混乱させる現象で、今年のは気象観測史上最大規模になるとの予測もある。

免税品は得か損か: ヨーロッパで議論続く
 【1997年10月1日】 空港にある免税品店が廃止されるとしたら、それは国民にとってマイナスのはず。だがヨーロッパで起きている議論は、かなり様子が違う。EUは経済統合にともなって1999年に域内の免税品制度をなくす、という決定をしたが、関連業界は存続を求めている。両者の議論を聞いていると、「免税品は国民に余計な税金を払わせている」という政府の意見の方が、正しいように思われるのだ。

独立目指すケベックの背後にフランスの影
 【1997年9月30日】 英語圏中心のカナダ連邦からの独立に動くケベック州に対して、旧宗主国のフランスが支援する動きをとっている。背景には古くからのイギリス=アメリカ連合vsフランスという対立に加え、フランス人の民族意識を鼓舞する狙いもあるようだ。独立を問う次の住民投票に向け、カナダ全体の緊張感が、徐々に高まっている。

タジキスタン:堅気に戻れないゲリラが和平の障害
 【1997年9月22日】 中央アジアのタジキスタンでは、5年間の内戦を終えるための和平合意が進んでいる。だが、ゲリラ組織は、内戦で生活できなくなった元農民の若者によって構成されており、兵士とも盗賊ともつかない現状を急に変えられない彼らが、和平に反対する勢力となっている。

香港歌手のトークは要注意
 【1997年7月16日】 香港返還を控え、中国で香港の歌手がコンサートを開くことが増えている。有名な歌手のコンサートはテレビ中継され、何百万人もの目に触れることもある。ステージにはテレビ局のパーソナリティが司会として登場し、歌手とにこやかに雑談する。だが、この雑談が要注意。6月18日の香港「明報」によると、最近こんなことがあった・・・

広州市内でニセ証明書が横行
 【1997年6月30日】 6月23日の星島日報によると、広東省の省都、広州市では、北京大学の卒業証明書が300元(約3000円)で買える。広州にある大手企業各社や病院、ホテルなどのマークが入った領収書も売っている。もちろん全部ニセモノ、もしくはモノとしては本物だが、不法に流出したものである。

再び内戦に突入しそうなカンボジア
 【1997年6月10日】 長い内戦と虐殺の時代から、1993年の総選挙を経て、ようやく平和な時を迎えているカンボジアが、再び内戦の危機に陥っている。カンボジアは世界でも珍しい、2人の首相がいる国だ。シアヌーク国王の息子であるラナリット王子が第1首相、1980年代にベトナムの支援で政権の座についていたフン・セン氏が第2首相をつとめている。この2人が、来年までに行われる選挙をにらみ、それぞれの武装勢力を抱えた形で対立している。

上海に「たまごっち」旋風
 【1997年6月5日】 香港の新聞、星島日報(6月5日)によると、上海で「たまごっち」が流行っている。「電子蛋」(「蛋」とは、卵という意味)と呼ばれ、今年これまでで最も売れているおもちゃなのだそうだ。多くのおもちゃ屋で、品切れ状態になっているという。たまごっちはすでに、香港、台湾で人気となっており、その流れが、中国で流行の最先端を行く上海にも波及したというわけだ。

中国の激動が始まった
 【1997年3月11日】 トウ小平氏の死去の直後、日本の新聞報道の主力の見方は、中国では混乱は起きないだろう、というものだった。しかし、先週の中国を見ていると、どうもそんなことはないようだ、という気がしてくる。今後の中国の混乱を予想させるできごとが、北京で立て続けに起きている。

欧亜の狭間で揺らぐトルコ
 【1997年3月3日】 トルコの大都市、イスタンブールは、ボスポラス海峡をはさんで、欧州とアジアをまたぐ場所にあり、文化的にも東ローマ帝国の遺産であるキリスト教的なものと、オスマン帝以来のイスラム教的なものが交じり合う、エキゾチックな町として知られている。だが、最近のトルコでは、イスタンブールが示すような、欧州とアジアの両方の特性を持っていることが、まさに欧州の一員となることを目指すのか、それとも中東イスラム世界の一員となるのか、という選択の迷いを生み、政治的、社会的なジレンマとなっている。

国家の威信に必要なくなった原子力産業のたたき売り
 【1997年2月22日】 アルゼンチンは1950年から、原子力技術に巨額の国家財政を投入してきた。だが昨年に方針を大転換し、建設中1カ所と稼働中の2カ所を含む、すべての原子力産業を、丸ごと売りに出した。国家の威信をかけて進めてきた原子力プロジェクトは、今や世界中で叩き売り状態だ。しかもアルゼンチンの場合、あと15年で廃炉にしなければならない原発もあり、買い手を探すのは難しい。

東ドイツで共産党の復活
 【1997年2月20日】 日本人とドイツ人は気質が似ていると言われる。だが、両国の社会主義政党の昨今の変化を比べると、ドイツ人の具体性と、日本人の曖昧性との間には、かなりの距離があることが分かる。インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(ヘラトリ)の自社記事は、東ドイツ地域で旧共産党が「民主社会主義者党」(DSP)と名前を変えて、失業の増加や社会保障の減少に不満を持つ東ドイツの人々の間で再評価され出していることを報じている。

中国・トウ小平氏死去の読み方
 【1997年2月20日】 トウ小平氏が死去した。1997年2月20日の英字新聞各紙は、いずれも大きな紙面を割いて、トウ氏が中国を貧困から経済急成長へと転換させた功績と、1989年の天安門事件を引き起こした失敗について論じている。たとえば、ウォールストリート・ジャーナルのアジア版では、論評のページで、トウ氏はもともと、経済改革だけでなく、政治改革も進めたかったのだが、政治については実現することができなかった、と分析している。

上海からの手紙・赤いネッカチーフの進学競争
 【1997年2月18日】 このホームページの読者の一人に、日本企業の上海駐在員をしている日本人の方がおり、ときどき作者に現地情勢を書いたメールをくださる。その中に、上海の「小皇帝」たちがガリ勉をさせられる様子が書いてあった。中国では外国企業の駐在員に対して、当局の監視や思わぬちょっかいがあるので、お名前を出せないが、内容を紹介すると・・・。

香港からの手紙・返還控えイヤ〜ナ感じ
 【1997年2月16日】 中国企業が香港の不動産を買いあさるのは、返還後にもっと高く転売できるという、投機的な読みからだろう。中国企業のそうした動きを見て、香港の人々の中にも、それなら中国企業に高く売ってやれ、という商魂があるのだろう。また中国では、預金・国債の金利や株式投資の環境が当局によってかなり規制されているので、儲かる投資がしにくい。そのことも、大陸から香港にカネが流れてくる背景となっている。

世界規模で増えている失業者
 【1997年2月】 この文章は本来4本だてで書こうと思っているのですが、とりあえず3本書けたところで出しておきます。中国編・上海で始まった「失業」めぐる実験・・・ロシア編・ここも実態は失業率30%・・・ドイツ編・欧州経済統合で進む失業率急増と産業空洞化

カトリック教会との仲直りにみるカストロの世界戦略
 【1997年1月30日】 カストロ議長のキリスト教に対する融和策は、マイアミの反カストロ派キューバ人の力を弱めることが目的の一つだ。欧米社会では、中世にイスラム教徒から聖地エルサレムを奪回しようとした十字軍以来、今でも「正義」と「キリスト教」が密接につながっている。そのことが、このイメージ合戦の背景にある。

円安が止まらないいくつかの理由
 【1997年1月29日】 円安が止まらない。年初には関係者の間で「1ドル120円になったら、日米欧の金融当局が協調介入するだろうから、それ以上の円安はないだろう」とみられていたが、1月29日に120円台をつけても、日銀その他の市場介入は実施されなかった。以前の円高で国際競争力を失って困っていた日本の輸出産業にとって、今回の円安はうれしいことだろう。だが、1980年代以来の円高が、日本の経済力の上昇を示すものだったことを思い出すと、今回の円安は日本の経済力が衰え始めていると世界が認識し始めている、ということを意味している。これは長期的にみると、日本にとって危機的なことである。

香港で反中国の会社がつぶされ始めた
 【1997年1月28日】 ジョルダーノというTシャツやジーンズのブランドをご存知だろうか。このブランドを作っているジョルダーノ・インターナショナルは香港の会社で、中国大陸にも以前は120店の直営販売店を持っていた。だが、この会社は今、経営危機に瀕している。香港の証券取引所に上場しているジョルダーノの株式は1月13日からの約二週間の間に4割も値下がりしてしまった。その原因は、このところ中国で進めようしていた新しい合弁事業がうまくいつていないこともあるが、最大の原因は、2年前まで社長をしていた創業者が、中国政府に対して公然と反対意見を述べてきた反体制の人だからだ、との指摘が多い。

香港・労働運動の危機
 【1997年1月26日】 「万国の労働者よ立ち上がれ」というスローガンが示すとおり、社会主義というのは、抑圧された労働者やその他の人民たちを、苦しみから解放することが大きな目的だったはずだ。しかし香港では、世界に残る数少ない「社会主義国」である中国への返還ともに、むしろ労働者への抑圧は強まりそうな状況になっている。

クリントン提案で動き出すか北朝鮮の民営化計画
 【1997年1月24日】 韓国政府の国家統一院は、満期がきても支払われないまま、ジャンク債市場で取り引きされている北朝鮮の国債を、韓国企業が買うことを認める方向で検討しているという。これは韓国の新聞各社が年明け早々に報じた。国際市場で取り引きされている北朝鮮国債は、ドイツマルクやスイスフラン建てで発行されたものが多いが、それまで額面の22%前後の価格で取り引きされていたのが、この報道を受けて25%程度まで上昇した。

ミンダナオ和平の希望と不安
 【1997年1月19日】 イスラム教徒ゲリラの指導者を自治区のトップに据え、ミンダナオ島の内戦を終わらせて、ゲリラ戦によってフィリピンで最も貧しい地域となったミンダナオ島を経済発展に導こうというラモス大統領の計画は、実行されつつある。

フィリピンの経済発展が始まった
 【1997年1月18日】 クーデターや政治腐敗、経済の停滞が長く続いていたフィリピンで、昨年あたりから経済成長が始まっている。経済全体の活況ぶりを示すGDP(国内総生産)の伸びは、1995年の一年間で5.7%から、96年は1−6月分だけで7.1%の成長となった。この成長率はアジアで最も高いものとなった。これまでマイナス成長に近い状態が続いていたことと比べると、大きな変化だ。

歴史から取り残されたブルガリアの悲劇
 【1997年1月11日】 1989年に失脚するまで35年間、東欧のブルガリアに君臨し続けた共産党のジフコフ書記長は、ソ連がペレストロイカの美名のもと、東欧諸国への支援を減らす方向に動き出したとき、ゴルバチョフ書記長に対して、ブルガリアをソ連邦の一国に加えてほしいと頼み、冷笑とともに断られたという。そして、最近のブルガリア情勢をみると、この国はどうやら、ゴルバチョフ氏に振られたときから、あまり変わっていないということが分かる。

インドのイメルダは滅びず
 【1997年1月10日】インドの南部、タミルナド州に、ジャヤラリサ・ジャヤラムという女性の政治家がいる。彼女は昨年5月の州議会選挙に敗れ、州の首席大臣の職を失った。その後、州警察は彼女を汚職関連の容疑で調べ始め、12月中旬、ついに彼女を逮捕した。その際、自宅を家宅捜索したところ、巨額の資産をため込んでいたことが発覚した。28キロの金塊と金製品、800キロの銀製品のほか、1万着以上のサリー、19台の自動車などで、フィリピンのイメルダ・マルコス女史のコレクションを思い起こさせる品々である。

南洋の王国復活はなるか
 【1997年1月1日】昨年9月に沖縄で実施された、米軍基地をめぐる住民投票は、江戸時代に鹿児島・島津家の植民地にされて以来、沖縄の人々の主権が日本国と「本土」の人々によって抑圧され続けてきたことに対して、沖縄の人々が今後、どう対応していくかを問うものだったといえる。そして、日本人にとって沖縄と同じように親しみがあるもう一つの南の島でも昨年8月、同じような動きがあった。−−ハワイで実施された、アメリカ合衆国との関係を問い直す住民投票である。


これより前の記事(1996年以前の記事)



 作者あてのメールはこちらからお願いします。リンクは、このサイト内のどの記事に対しても、自由に張っていただいてかまいません。